測⁠定⁠値⁠の⁠解⁠説

PR間⁠隔、QRS持⁠続時⁠間、QT間⁠隔⁠と⁠は?Apple Watchの心⁠電⁠図⁠で見⁠る一⁠般的⁠な⁠範⁠⁠⁠囲

心電図の間隔は、1回の拍動のそれぞれの段階にかかる時間を表します。成人では、PR間隔はおおむね120~200 ms、QRS持続時間は70~100 ms程度が一般的です。QTは心拍数によって変わるため、補正してQTcとします。Apple Watchの心電図でも、波がはっきり記録されていれば、これらの間隔を確認できることがよくあり⁠ま⁠す⁠。

Apple Watchの心電図アプリが教えてくれるのは、リズムについてです。医師が心電図でふだん測っている「間隔」、つまり1回1回の拍動の中にある細かなタイミングは表示されません。けれども、そのタイミングは記録の中にちゃんと含まれていて、知っておく価値があります。それぞれの間隔は、拍動のある段階にどれだけ時間がかかったかを表してい⁠ま⁠す⁠。

各間⁠隔⁠の⁠ま⁠⁠⁠と⁠⁠⁠め

間⁠隔表⁠す⁠も⁠の成人の一般的な⁠範⁠囲
R-⁠R1つの拍動から次の拍動までの⁠時⁠間600~1,000 ms(60~100 bpmの⁠場⁠合⁠)
PR心房が興奮し始めてから、心室が興奮し始める⁠ま⁠で約120~200 ms(下限を100 msとする資料もあり⁠ま⁠す⁠)
QRS心⁠室⁠の⁠興⁠奮約70~100 ms(120 ms以上は幅が広いとされ⁠ま⁠す⁠)
QT心室の興奮と⁠回⁠復心拍数によって変わり⁠ま⁠す
QTc心拍数で補正⁠し⁠た⁠QT男性で約350~450 ms、女性⁠で⁠約⁠360~460 ms

これらの範囲は、臨床の参考文献にもとづくものです。123 一般的な成人を想定した値で、資料によって少しずつ異なるため、厳密な境界線ではなく大まかな目安として考えてくだ⁠さ⁠い⁠。

デモ用の記録を表示したECG Tracker+の「計測」画面。心拍数66 bpm、R-R間隔905 ms、HRV 28 ms、QRS持続時間70 ms、QRS振幅2.93 mV、QT間隔398 ms、QTc 413 msを、それぞれの参考範囲とともに表示
ECG Tracker+に表示される各間隔の推定値です。それぞれに成人の参考範囲と、値がどのあたりにあるかを示す点が添えられてい⁠ま⁠す⁠。

R-⁠R間⁠隔

R-⁠Rは、連続する2つのQRS波の間の時間です。心拍数のもとになる値で、60,000をミリ秒単位のR-R間隔で割ると、1分あたりの拍動数(bpm)になります。R-⁠R間隔が1,000 msなら60 bpm、600 msなら⁠100 bpm⁠で⁠す⁠。

R-R間隔がぴったり同じになることはありません。呼吸に合わせてわずかに長くなったり短くなったりします。これは正常なゆらぎで、HRVのもとになるもの⁠で⁠す⁠。4

P波⁠と⁠PR⁠間⁠⁠⁠隔

P波は、QRS波の前にある小さなふくらみで、心房が興奮するときに現れます。ふつう約120 ms未満です。PR間隔はP波の始まりからQRS波の始まりまでの時間で、一般的に約120~200 msです。どちらを測るにもはっきりしたP波が必要ですが、単一誘導の記録ではP波は小さく記録されます。P波のガイドとPR間隔のガイドでは、それぞれを実際の1拍にマークして示してい⁠ま⁠す⁠。

QRS持⁠続時⁠間⁠と⁠振⁠⁠⁠幅

QRS波は拍動ごとに現れる高くとがった波で、心室が興奮するときに現れます。一般的に約70~100 ms続き、120 ms以上は幅が広いとされます。その高さであるQRS振幅は記録された信号の大きさを表すもので、心臓が血液を送り出す力の強さを表すものではありません。QRS持続時間のガイドとQRS振幅のガイドでは、実際の1拍を使って両方を説明してい⁠ま⁠す⁠。

QT間⁠⁠⁠隔⁠⁠⁠と⁠QTc

QTは、QRS波の始まりからT波の終わりまでの時間で、心室の興奮と回復の両方を含みます。QTは心拍数が上がると自然に短くなるため、心拍数で補正してQTcとします。QTcにすると、異なる記録どうしでも比べられるようになり⁠ま⁠す⁠。

QTは、ソフトウェアにとっても人にとっても、正確に測るのが最も難しい間隔です。T波の終わりを決める方法として認められているものが1つではないためです。よく使われる2つの方法では約10 msの差があり、専門家どうしでもそれよりずっと大きく意見が分かれることがあります。5 計算式、範囲、アプリによって値が異なる理由は、QTcのガイドで説明してい⁠ま⁠す⁠。

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠で間⁠隔⁠を測⁠れ⁠ま⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

Apple Watchの記録で手作業で測った間隔を、12誘導心電図の第I誘導と比べた研究があります。健康なボランティア43人を対象にしたある研究では、平均の差は小さく、PRで約5 ms、QRSで約7 ms、QTで約11 msでした。ただし、個々の記録ではもっと大きな差がありました。6 患者100人を対象にした別の研究では、85%の患者でApple Watchの記録からQTを測定できま⁠し⁠た⁠。7

これらの研究は手作業で測ったもので、特定のアプリを検証したものではありません。わかるのは、手首でとる単一誘導の記録にも間隔を推定できるだけの情報が含まれていることが多く、一方でそうでない記録もある、ということ⁠で⁠す⁠。

間⁠隔⁠に影⁠響⁠す⁠る⁠⁠⁠も⁠⁠⁠の

  • 心拍数。 QTは大きく影響を受けますが、PRはそれほどでもありま⁠せ⁠ん⁠。
  • 記録の品質。 ノイズがあると小さな波が隠れます。特にP波とT波の終わりが見えにくくなり⁠ま⁠す⁠。
  • 誘導。 第I誘導では、ほかの誘導より小さく記録される波があります。QTも誘導によって異なることがあり⁠ま⁠す⁠。3
  • 薬や血液中の電解質。 一部の薬や電解質の変化によって、QTが延長することがあり⁠ま⁠す⁠。
  • 年齢と性別。 QTcは女性のほうがやや長い傾向があり⁠ま⁠す⁠。

ECG Tracker+では、それぞれの間隔は、記録からその値を裏づけられる場合にだけ表示されます。目印となる点がはっきりしないときは、推測で値を出さずに、利用できないことを示します。その理由は測定値が表示されない理由のガイドで説明してい⁠ま⁠す⁠。

範囲は目安であり、診断ではありま⁠せ⁠ん

一般的な範囲から外れた値があっても、それは診断ではありません。範囲内に収まっていても、心臓が健康であることの証明にはなりません。気になる測定値があれば、医師が12誘導心電図で確認でき⁠ま⁠す⁠。

よ⁠く⁠あ⁠る⁠質⁠⁠⁠問

PR間⁠隔⁠の正⁠常値⁠は⁠ど⁠の⁠く⁠ら⁠い⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

成人のPR間隔は、一般的に約120~200 msです。下限を100 msとしている資料もあります。PRが200 msより長い場合は、第1度房室ブロックと呼ばれ⁠ま⁠す⁠。

QRS持⁠続時⁠間⁠の正⁠常値⁠は⁠ど⁠の⁠く⁠ら⁠い⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

一般的なQRSの持続時間は約70~100 msです。120 ms以上は幅が広いとされ、医師に相談する価値があり⁠ま⁠す⁠。

Apple WatchでPR間⁠隔⁠を見⁠る⁠こ⁠と⁠は⁠で⁠き⁠ま⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

Apple Watchの心電図アプリには、間隔は表示されません。ECG Tracker+は、波が十分にはっきり記録されていれば、Apple Watchの記録からPR、QRS、QT、QTcを推定し⁠ま⁠す⁠。

出⁠⁠⁠典

  1. LITFL: PR interval
  2. Merck Manual Professional: Electrocardiography
  3. Postema PG, Wilde AAM: The measurement of the QT interval, Current Cardiology Reviews 2014
  4. Shaffer F, Ginsberg JP: An overview of heart rate variability metrics and norms, 2017
  5. ESC CardioGenomics Insights: How to measure the QT interval
  6. Saghir N et al.: A comparison of manual electrocardiographic interval and waveform analysis in lead 1 of 12-⁠lead ECG and Apple Watch ECG, 2020
  7. Strik M et al.: Validating QT-⁠interval measurement using the Apple Watch ECG, Circulation 2020

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠を、も⁠っ⁠と詳⁠⁠⁠し⁠⁠⁠く

波形全体、参考用の測定値、トレンド、期外収縮の可能性を示すパターンのフラグを、iPhoneで確認できます。処理はデバイス上で完結し⁠ま⁠す⁠。