HRVは、いまや最も話題にのぼる健康指標のひとつで、Apple Watchもすでにヘルスケアアプリで表示しています。では、なぜ心電図からは別のHRVが出てくるのか、そしてどちらを見ればよいのか。その答えは、何を、どうやって、どれだけの時間測るかにあります。
HRVとは
心臓は、メトロノームのように一定の間隔で拍動しているわけではありません。拍動と拍動の間の時間はたえず変化していて、息を吐くときに長くなり、吸うときに短くなります。このゆらぎが心拍変動(HRV)です。その多くは、安静時に心拍を遅くする神経系の一部、迷走神経の働きを反映しています。1
rMSSDとSDNN
正常な拍動どうしの間隔からHRVをまとめる方法として、よく使われるものが2つあります。1
| 指標 | 表すもの | 適した用途 |
|---|---|---|
| rMSSD | ある拍動から次の拍動への変化の大きさ | 短い記録、拍動ごとの迷走神経の影響 |
| SDNN | すべての間隔が平均のまわりにどれだけ広がっているか | 長い記録、全体的なゆらぎ |
どちらもミリ秒で表し、正常な拍動だけを使います。期外収縮やノイズは結果をゆがめてしまうため、計算から除かれます。
実際の記録でみるHRV

これは実際のApple Watchでとった30秒間の心電図で、ECG Tracker+がふだんあなたの記録に行っているのと同じ解析をしています。波形の上の数値は、ミリ秒単位のR-R間隔です。
この10秒間で、間隔は約1,027 msから932 msまで短くなり、そのあと再び1,086 msまで長くなります。このようにゆっくり短くなったり長くなったりするのは、呼吸によって心拍数が変わるときの典型的なパターンです。記録全体では平均心拍数が約61 bpmで、アプリが算出したrMSSDは43 ms、SDNNは48 msでした。
ヘルスケアアプリのHRVが違う理由
ヘルスケアアプリに表示されるHRVは、じっとしているときに、Apple Watchが裏側の光学式心拍センサーを使ってSDNNとして算出したものです。この測定は、1日を通して定期的に、また呼吸セッションの間に行われます。2
心電図は拍動を1つずつ電気的にとらえ、R波の頂点のタイミングを正確に記録します。ECG Tracker+は、30秒間の記録ごとにその間隔を使って、rMSSDとSDNNを算出します。
| ヘルスケアアプリのHRV | ECG Tracker+で心電図から算出するHRV | |
|---|---|---|
| センサー | 光学式(PPG) | 電気式(心電図) |
| 指標 | SDNN | rMSSDとSDNN |
| 測定のタイミング | バックグラウンドで定期的に | 心電図を記録するたび |
| 長さ | バックグラウンドでの短い測定 | 30秒 |
センサーも指標も測る瞬間も違うため、2つの値は置き換えられるものではありません。一方がもう一方の答え合わせになるわけでもありません。

30秒間でわかること
標準的なHRVの測定では、短期的な解析に5分間、長期的な解析に24時間の記録を使います。それより短いものは超短時間と呼ばれ、研究者は、超短時間の値を、標準的な記録とは置き換えられない大まかな代わりの指標として扱っています。1
よく使われる指標のなかでは、rMSSDがごく短い記録でも最も安定しています。ある大規模な研究では、わずか10秒の区間から求めたrMSSDでも、より長い記録の値に近かった一方、SDNNで同じ程度に近づけるには、約30秒、または10秒の区間を複数使う必要がありました。3 この研究は心電図ではなく血圧の記録から得た間隔を使っているため、裏づけているのは原則であって、特定の機器ではありません。
実際のところ、30秒間の心電図から得たrMSSDは、その30秒間を実際に測った値です。似た条件でとった自分の記録どうしを比べるときに最も役立ち、医療機関やほかの機器で測った5分間や24時間の値とそのまま比べるべきではありません。
「良い」HRVとは
これが正常、というHRVの値はひとつに決まっていません。一般に若い人ほど高く、年齢とともに下がります。1 健康な人どうしでも、値は大きく異なります。呼吸、姿勢、時間帯、最近の運動、睡眠、アルコール、カフェイン、病気、ストレスのどれもが値を動かします。
だからこそ、平均値の一覧表よりも、あなた自身の履歴のほうが大切です。同じ方法で測った、あなたにとってのいつもの値が、いちばんの基準になります。
HRVを公平に追うには
- 毎回同じくらいの時間帯に記録しましょう。できれば朝、安静にしているときが理想です。
- 記録の前に数分間座り、いつもどおりに呼吸します。
- 姿勢と腕の位置を毎回そろえます。
- 睡眠不足や遅い時間の運動など、いつもと違うことがあればメモしておきます。
- 期外収縮やノイズのある記録は、比べにくいものとして扱います。
ECG Tracker+では、トレンドのHRVカードに、その期間の中央値と変化が表示されます。Apple Watch用アプリでも、手首の上でHRVのトレンドを確認できます。

HRVが低い、あるいは高いというだけで、何かが診断されるわけではありません。症状とあわせて変化に気づいた場合は、医師に相談してください。
よくある質問
Apple WatchはrMSSDとSDNNのどちらを使っていますか?
ヘルスケアアプリは、光学式センサーで測ったHRVをSDNNとして表示します。ECG Tracker+は、心電図の記録からrMSSDとSDNNを算出します。
心電図のHRVが、ヘルスケアアプリのHRVと違うのはなぜですか?
センサーも指標も測る瞬間も違うからです。30秒間の心電図から得たrMSSDと、光学式センサーがバックグラウンドで測ったSDNNは置き換えられるものではないため、数値に差が出るのは自然なことです。
30秒間のHRVは正確ですか?
その30秒間のことは正確に表していて、rMSSDは短い記録でも比較的安定しています。ただし超短時間のスナップショットなので、同じ方法でとった自分の記録どうしを比べるのに使うのが最適です。
rMSSDの正常値はどのくらいですか?
これが正常、という値はひとつに決まっていません。rMSSDは健康な人どうしでも大きく異なり、年齢とともに下がります。似た条件でとった自分の記録が、最も役に立つ基準になります。

