測⁠定⁠値⁠の⁠解⁠説

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠で⁠み⁠る心⁠拍⁠変⁠動(HRV)。rMSSD、SDNN、ヘ⁠ル⁠ス⁠ケ⁠アア⁠プ⁠リ⁠と⁠の⁠違⁠⁠⁠い

心拍変動(HRV)とは、拍動と拍動の間の時間に生じる自然なゆらぎのことです。ヘルスケアアプリは、光学式センサーで測ったHRVをSDNNとして表示します。心電図は拍動を1つずつ電気的にとらえるので、rMSSDも求められます。30秒間の記録から得るrMSSDは超短時間のスナップショットで、自分の記録どうしを比べるのに役立ちますが、5分間や24時間の値と置き換えられるものではありま⁠せ⁠ん⁠。

HRVは、いまや最も話題にのぼる健康指標のひとつで、Apple Watchもすでにヘルスケアアプリで表示しています。では、なぜ心電図からは別のHRVが出てくるのか、そしてどちらを見ればよいのか。その答えは、何を、どうやって、どれだけの時間測るかにあり⁠ま⁠す⁠。

HRV⁠と⁠⁠⁠は

心臓は、メトロノームのように一定の間隔で拍動しているわけではありません。拍動と拍動の間の時間はたえず変化していて、息を吐くときに長くなり、吸うときに短くなります。このゆらぎが心拍変動(HRV)です。その多くは、安静時に心拍を遅くする神経系の一部、迷走神経の働きを反映してい⁠ま⁠す⁠。1

rMSSDとSDNN

正常な拍動どうしの間隔からHRVをまとめる方法として、よく使われるものが2つあり⁠ま⁠す⁠。1

指⁠標表⁠す⁠も⁠の適⁠し⁠た⁠用⁠途
rMSSDある拍動から次の拍動への変化の大⁠き⁠さ短い記録、拍動ごとの迷走神経の⁠影⁠響
SDNNすべての間隔が平均のまわりにどれだけ広がってい⁠る⁠か長い記録、全体的なゆ⁠ら⁠ぎ

どちらもミリ秒で表し、正常な拍動だけを使います。期外収縮やノイズは結果をゆがめてしまうため、計算から除かれ⁠ま⁠す⁠。

実⁠際⁠の記⁠録⁠で⁠⁠⁠み⁠⁠⁠る⁠HRV

実際のApple Watchの心電図の10秒間。隣り合う拍動どうしのR-R間隔が波形の上に表示され、932 msまで短くなったあと、再び1,086 msまで長くなっている
ECG Tracker+で解析した、実際のApple Watchの記録です。R-⁠R間隔が、ゆっくりとした波のように短くなったり長くなったりしています。横にスクロールすると、その変化をたどれ⁠ま⁠す⁠。

これは実際のApple Watchでとった30秒間の心電図で、ECG Tracker+がふだんあなたの記録に行っているのと同じ解析をしています。波形の上の数値は、ミリ秒単位のR-⁠R間隔⁠で⁠す⁠。

この10秒間で、間隔は約1,027 msから932 msまで短くなり、そのあと再び1,086 msまで長くなります。このようにゆっくり短くなったり長くなったりするのは、呼吸によって心拍数が変わるときの典型的なパターンです。記録全体では平均心拍数が約61 bpmで、アプリが算出したrMSSDは43 ms、SDNNは48 msで⁠し⁠た⁠。

ヘ⁠ル⁠ス⁠ケ⁠アア⁠プ⁠リ⁠のHRVが違⁠う⁠理⁠⁠⁠由

ヘルスケアアプリに表示されるHRVは、じっとしているときに、Apple Watchが裏側の光学式心拍センサーを使ってSDNNとして算出したものです。この測定は、1日を通して定期的に、また呼吸セッションの間に行われ⁠ま⁠す⁠。2

心電図は拍動を1つずつ電気的にとらえ、R波の頂点のタイミングを正確に記録します。ECG Tracker+は、30秒間の記録ごとにその間隔を使って、rMSSDとSDNNを算出し⁠ま⁠す⁠。

ヘルスケアアプ⁠リ⁠の⁠HRVECG Tracker+で心電図から算出⁠す⁠る⁠HRV
セ⁠ン⁠サ⁠ー光⁠学⁠式⁠(PPG)電気式(心⁠電⁠図⁠)
指⁠標SDNNrMSSDとSDNN
測定のタイミ⁠ン⁠グバックグラウンドで定期⁠的⁠に心電図を記録する⁠た⁠び
長⁠さバックグラウンドでの短い⁠測⁠定30⁠秒

センサーも指標も測る瞬間も違うため、2つの値は置き換えられるものではありません。一方がもう一方の答え合わせになるわけでもありま⁠せ⁠ん⁠。

デモ用の記録を表示したECG Tracker+の「計測」画面。HRV(rMSSD)28 msが、心拍数、R-R間隔、QRS、QT、QTcと並んで表示されている
HRV(rMSSD)は、同じ30秒間の記録から得たほかの測定値と並んで表示され⁠ま⁠す⁠。

30秒⁠間⁠で⁠わ⁠か⁠る⁠⁠⁠こ⁠⁠⁠と

標準的なHRVの測定では、短期的な解析に5分間、長期的な解析に24時間の記録を使います。それより短いものは超短時間と呼ばれ、研究者は、超短時間の値を、標準的な記録とは置き換えられない大まかな代わりの指標として扱ってい⁠ま⁠す⁠。1

よく使われる指標のなかでは、rMSSDがごく短い記録でも最も安定しています。ある大規模な研究では、わずか10秒の区間から求めたrMSSDでも、より長い記録の値に近かった一方、SDNNで同じ程度に近づけるには、約30秒、または10秒の区間を複数使う必要がありました。3 この研究は心電図ではなく血圧の記録から得た間隔を使っているため、裏づけているのは原則であって、特定の機器ではありま⁠せ⁠ん⁠。

実際のところ、30秒間の心電図から得たrMSSDは、その30秒間を実際に測った値です。似た条件でとった自分の記録どうしを比べるときに最も役立ち、医療機関やほかの機器で測った5分間や24時間の値とそのまま比べるべきではありま⁠せ⁠ん⁠。

「良⁠い⁠」HRV⁠と⁠⁠⁠は

これが正常、というHRVの値はひとつに決まっていません。一般に若い人ほど高く、年齢とともに下がります。1 健康な人どうしでも、値は大きく異なります。呼吸、姿勢、時間帯、最近の運動、睡眠、アルコール、カフェイン、病気、ストレスのどれもが値を動かし⁠ま⁠す⁠。

だからこそ、平均値の一覧表よりも、あなた自身の履歴のほうが大切です。同じ方法で測った、あなたにとってのいつもの値が、いちばんの基準になり⁠ま⁠す⁠。

HRVを公⁠平⁠に追⁠う⁠⁠⁠に⁠⁠⁠は

  • 毎回同じくらいの時間帯に記録しましょう。できれば朝、安静にしているときが理想⁠で⁠す⁠。
  • 記録の前に数分間座り、いつもどおりに呼吸し⁠ま⁠す⁠。
  • 姿勢と腕の位置を毎回そろえ⁠ま⁠す⁠。
  • 睡眠不足や遅い時間の運動など、いつもと違うことがあればメモしておき⁠ま⁠す⁠。
  • 期外収縮やノイズのある記録は、比べにくいものとして扱い⁠ま⁠す⁠。

ECG Tracker+では、トレンドのHRVカードに、その期間の中央値と変化が表示されます。Apple Watch用アプリでも、手首の上でHRVのトレンドを確認でき⁠ま⁠す⁠。

Apple Watch UltraのECG Tracker+。30日間のHRV(rMSSD)のトレンドを表示(中央値42 ms)
Apple WatchのHRVは、光学式心拍センサーではなく、心電図の記録から算出され⁠ま⁠す⁠。
HRVは健康のスコアではありま⁠せ⁠ん

HRVが低い、あるいは高いというだけで、何かが診断されるわけではありません。症状とあわせて変化に気づいた場合は、医師に相談してくだ⁠さ⁠い⁠。

よ⁠く⁠あ⁠る⁠質⁠⁠⁠問

Apple WatchはrMSSDとSDNNの⁠ど⁠ち⁠ら⁠を使⁠っ⁠て⁠い⁠ま⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

ヘルスケアアプリは、光学式センサーで測ったHRVをSDNNとして表示します。ECG Tracker+は、心電図の記録からrMSSDとSDNNを算出し⁠ま⁠す⁠。

心⁠電⁠図⁠のHRVが、ヘ⁠ル⁠ス⁠ケ⁠アア⁠プ⁠リ⁠のHRVと違⁠う⁠の⁠は⁠な⁠ぜ⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

センサーも指標も測る瞬間も違うからです。30秒間の心電図から得たrMSSDと、光学式センサーがバックグラウンドで測ったSDNNは置き換えられるものではないため、数値に差が出るのは自然なこと⁠で⁠す⁠。

30秒⁠間⁠のHRVは正⁠確⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

その30秒間のことは正確に表していて、rMSSDは短い記録でも比較的安定しています。ただし超短時間のスナップショットなので、同じ方法でとった自分の記録どうしを比べるのに使うのが最適⁠で⁠す⁠。

rMSSDの正⁠常値⁠は⁠ど⁠の⁠く⁠ら⁠い⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

これが正常、という値はひとつに決まっていません。rMSSDは健康な人どうしでも大きく異なり、年齢とともに下がります。似た条件でとった自分の記録が、最も役に立つ基準になり⁠ま⁠す⁠。

出⁠⁠⁠典

  1. Shaffer F, Ginsberg JP: An overview of heart rate variability metrics and norms, 2017
  2. Apple: Heart rate, calorimetry and activity on Apple Watch (November 2024)
  3. Munoz ML et al.: Validity of (ultra-)short recordings for heart rate variability measurements, PLOS ONE 2015

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠を、も⁠っ⁠と詳⁠⁠⁠し⁠⁠⁠く

波形全体、参考用の測定値、トレンド、期外収縮の可能性を示すパターンのフラグを、iPhoneで確認できます。処理はデバイス上で完結し⁠ま⁠す⁠。