心⁠電⁠図⁠の⁠見⁠方

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠でQ⁠R⁠S⁠幅⁠が広⁠い⁠と⁠き。「Q⁠R⁠S⁠幅延⁠長⁠の可⁠能⁠性」⁠が意⁠味⁠す⁠る⁠⁠⁠こ⁠⁠⁠と

QRS幅は、拍動ごとに現れる高くとがった波であるQRS波の持続時間で、ふつうは約70~100 msです。120 ms以上だとQRS幅が広いとされます。これは心室がふだんよりゆっくり興奮したことを意味し、最も多い原因は脚ブロックです。ECG Tracker+は、記録の拍動のQRS幅が一貫して120 ms以上の場合に、「QRS幅延長の可能性」をマークし⁠ま⁠す⁠。

たいていの場合、QRS波は幅が狭く鋭い形をしています。信号が速い伝導系を一気に駆け抜け、ほんの一瞬で心室を興奮させるからです。その伝導路が遅くなったり迂回されたりすると、波は横に引き延ばされます。それが幅広QRSです。ここでは、実際の単一誘導の記録でどう見えるかを紹介し⁠ま⁠す⁠。

Q⁠R⁠S⁠幅⁠が広⁠く⁠な⁠る⁠理⁠⁠⁠由

QRS波は、下側の部屋である心室が興奮する様子を表しています。ふつう信号は、右脚と左脚という2本の速い伝導路を通って伝わり、QRS波は約70~100 ms続きます。1 120 ms以上のQRSは幅が広いとされ⁠ま⁠す⁠。2

よくある原因は次のとおり⁠で⁠す⁠。2

  • 脚ブロック。 2本の伝導路の一方で伝導が遅くなったり途絶えたりするため、心臓のその側は遅れて、細胞から細胞へと少しずつ興奮します。右脚ブロックの場合も、左脚ブロックの場合もあり⁠ま⁠す⁠。
  • 心室から始まる⁠拍⁠動(PVC⁠な⁠ど⁠)
  • 心室をペーシングするペースメー⁠カ⁠ー
  • 心筋の中の伝導を遅くする、一部の薬や高いカリウ⁠ム⁠値

実⁠際⁠の記⁠録⁠⁠⁠の⁠例

5秒間の第I誘導心電図。規則正しい拍動のそれぞれに幅の広い下向きの波が続き、1つの拍動が強調表示されて「QRS幅延長の可能性」のラベルが付いている
ECG Tracker+で解析した、実際の第I誘導の記録です。アプリは「QRS幅延長の可能性」をマークしました。この記録の12誘導心電図全体を読んだ循環器専門医は、完全右脚ブロックと報告してい⁠ま⁠す⁠。

これは実際の第I誘導の記録で、第I誘導はApple Watchでとる記録に最も近い誘導です。12誘導心電図全体を読んだ循環器専門医は、完全右脚ブロックと報告しています。ECG Tracker+は、ふだんあなたの記録に行っているのと同じ解析を第I誘導だけに行い、「QRS幅延長の可能性」をマークしま⁠し⁠た⁠。

リズムそのものは規則正しく、約58 bpmです。目を引くのは、1拍ごとの形です。上向きの鋭い波のあとに、幅が広くなだらかに引き延ばされた下向きの波が続き、それから基線に戻ります。右脚ブロックでは、第I誘導にこうした幅広くなだらかなS波が現れるのが典型的⁠で⁠す⁠。3

ECG Tracker+の「拍動形態」に表示された1拍。QRS波の始まりから終わりまでに括弧が付き、QRSが約172 msと表示されている
同じ記録の1拍を、アプリの「拍動形態」で表示したものです。アプリは、幅の広いS波を含めて、QRSを約172 msと測定しま⁠し⁠た⁠。

アプリは1つの拍動で、波が最初に立ち上がる点から幅の広いS波の終わりまでを測り、QRSを約172 msと測定しました。一般的なQRSは100 ms未満⁠で⁠す⁠。

ECG Tracker+が判⁠断⁠す⁠る⁠し⁠⁠⁠く⁠⁠⁠み

幅が広く見える拍動が1つあるだけでは、マークされません。ECG Tracker+は、ほかと似た形の拍動それぞれでQRSを測って記録全体の中央値を求め、その中央値が120 ms以上の場合にだけ「QRS幅延長の可能性」をマークします。そのうえで代表的な1拍を波形上で強調表示するので、何を測ったのかを確認でき⁠ま⁠す⁠。

PVCのように、幅の広い早い拍動が1つだけある場合は、代わりに期外収縮の可能性としてマークされ⁠ま⁠す⁠。

1つ⁠の誘⁠導⁠で⁠は⁠わ⁠か⁠ら⁠な⁠い⁠⁠⁠こ⁠⁠⁠と

12誘導心電図はQRS波を多くの方向からとらえるので、医師は右脚ブロックと左脚ブロック、あるいはほかの原因とを見分けることができます。3 1つの誘導では、それはできません。第I誘導ではQRS波の一部が基線の近くを通ることもあるため、腕時計でとった記録で測った幅が、12誘導心電図での測定値と異なることがあり⁠ま⁠す⁠。4

そのためECG Tracker+は「QRS幅延長の可能性」と表示します。これは医師に見せるきっかけであり、診断ではありま⁠せ⁠ん⁠。

幅⁠広QRSは深⁠刻⁠な⁠⁠⁠の⁠⁠⁠か

原因と、その人自身の状態によって異なります。右脚ブロックは健康な人にも起こることがあり、症状や心臓病がなければ、たいていは深刻なものではありません。5 左脚ブロックは、背景にある心臓の病気と関係していることが比較的多く、たいていは追加の検査が行われます。6 新たに見られた幅広QRSは、特に症状を伴う場合、必ず医師に診てもらうべき⁠で⁠す⁠。

受⁠診⁠の⁠目⁠安

胸の痛み、失神、ひどい息切れがある場合や、心拍が非常に速い、または非常に遅い場合は、救急車を呼んでください。QRS幅延長の可能性が記録に現れ、まだ医師に相談したことがない場合は、記録を医師に見せてください。医師は12誘導心電図で確かめることができ⁠ま⁠す⁠。

よ⁠く⁠あ⁠る⁠質⁠⁠⁠問

QRS持⁠続時⁠間⁠の正⁠常値⁠は⁠ど⁠の⁠く⁠ら⁠い⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

成人の一般的なQRSの持続時間は約70~100 msです。120 ms以上のQRSは幅が広いとされ⁠ま⁠す⁠。

Apple Watchで脚ブ⁠ロ⁠ッ⁠ク⁠は⁠わ⁠か⁠り⁠ま⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

Appleの心電図アプリは脚ブロックを表示しません。腕時計でとった記録でもQRS幅が広いことはわかりますが、右脚ブロックか左脚ブロックかを見分けるには12誘導心電図が必要⁠で⁠す⁠。

ECG Tracker+が「Q⁠R⁠S⁠幅延⁠長⁠の可⁠能⁠性」⁠を1拍⁠だ⁠け⁠にマ⁠ー⁠ク⁠し⁠た⁠の⁠は⁠な⁠ぜ⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

アプリは記録全体のQRS幅の中央値から判断し、そのうえで代表的な1拍を強調表示します。この例のような記録では、強調表示された拍動だけでなく、ほとんどの拍動の幅が広くなってい⁠ま⁠す⁠。

記⁠録⁠し直⁠し⁠た⁠ほ⁠う⁠が⁠よ⁠い⁠で⁠⁠⁠す⁠⁠⁠か⁠?

同じ方法でさらに何回か記録すると、幅広QRSがいつも見られるかどうかがわかります。記録はすべて残しておき、医師に見せてください。医師は12誘導心電図で確認でき⁠ま⁠す⁠。

出⁠⁠⁠典

  1. MSDマニュアル プロフェッショナル版「心電図⁠検⁠査⁠」
  2. LITFL: QRS interval
  3. LITFL: Right bundle branch block (RBBB)
  4. Saghir N et al.: A comparison of manual electrocardiographic interval and waveform analysis in lead 1 of 12-⁠lead ECG and Apple Watch ECG, 2020
  5. Cleveland Clinic: Right bundle branch block
  6. LITFL: Left bundle branch block (LBBB)

Apple Watchの心⁠電⁠図⁠を、も⁠っ⁠と詳⁠⁠⁠し⁠⁠⁠く

波形全体、参考用の測定値、トレンド、期外収縮の可能性を示すパターンのフラグを、iPhoneで確認できます。処理はデバイス上で完結し⁠ま⁠す⁠。