「Apple Watchの心電図って、病院でとる心電図と同じくらい信頼できるの?」これは、この機能についてとくによく聞かれる質問のひとつです。正直に答えるなら、両者は別の道具です。Apple Watchは、心臓の電気活動を実際に記録しています。ただ、それを1つの方向から、短い時間だけとらえているのです。
「誘導」とは
心電図の「誘導」とは、体の2点の間でとらえた心臓の電気活動の見え方のことです。誘導ごとに心臓を見る角度が違います。部屋のあちこちに置いたカメラのようなものだと考えると、わかりやすいでしょう。
標準的な12誘導心電図では、胸と両腕、両脚に電極を付け、異なる角度から12通りの波形を記録します。Apple Watchが使うのは2点だけで、片方の手首に触れるApple Watchの背面と、Digital Crownにのせた反対側の手の指先です。こうして得られる記録は、片方の腕からもう片方の腕へ胸を横切る方向の見え方である、第I誘導に似ています。1
単一誘導でしっかりとらえられること
- 記録全体を通した心拍数
- 拍動が規則的か不規則かというリズム。Apple Watchはこれをもとに心房細動をチェックします
- 拍動と拍動の間隔、つまりR-R間隔
- 多くの間隔の推定値。QRS持続時間のほか、波がはっきりしていれば、PR間隔やQT間隔も推定できることが多くあります
- 期外収縮。タイミングや形の違いで目立つことがよくあります
研究では、Appleが示す制約の範囲内であれば、Apple Watchの記録を使って、医療機関の心電図と比べても良好な精度で心房細動を分類できることがわかっています。2 Apple Watchの記録からQTを測定する研究も行われていて、多くの場合でおおむね一致する一方、12誘導での測定値との差も見られました。3
12誘導心電図で加わること
心臓の問題のなかには、特定の角度からしか見えないものや、複数の誘導を比べなければわからないものがあります。
| 確認したいこと | Apple Watch(単一誘導) | 12誘導心電図 |
|---|---|---|
| 心拍数と規則性 | はい | はい |
| 心房細動の分類 | はい(Appleが示す制約の範囲内) | はい |
| 心臓発作の兆候 | いいえ | はい |
| 期外収縮がどこで生じているか | 限定的 | より詳しくわかる |
| 心臓の電気軸や心房・心室の拡大 | いいえ | はい |
| 伝導ブロックの詳細 | 限定的 | はい |
| 連続的なモニタリング | いいえ(30秒間) | いいえ(約10秒間) |
Appleは、心電図アプリでは心臓発作、血栓、脳卒中のほか、多くの病気を検知できないと明記しています。4 これは記録の欠陥ではありません。1つの誘導で見える範囲が、そこまでだということです。
Apple Watchならではの強み
Apple Watchは、何かが起きたその場にあります。医療機関でとる12誘導心電図が記録するのは、受診した日の約10秒間で、そのときは体調がよいことも少なくありません。Apple Watchなら、夜11時にソファでくつろいでいて胸がドキドキした、その瞬間を記録できます。単一誘導の限界がきちんと理解されていれば、このタイミングを重視する医師は多くいます。
症状が出たり消えたりする場合、医師はホルター心電図やイベントレコーダーなど、数日から数週間にわたって記録する機器を使うこともあります。5
単一誘導を最大限に活かすには
- きれいに記録する。 腕を置いて休ませ、じっとしていましょう。その理由は、ノイズの少ないApple Watchの心電図をとるためのガイドで説明しています。
- よいタイミングで記録する。 症状に気づいたら、症状が続いているうちに記録し、メモを添えておきましょう。
- 詳しく見る。 ECG Tracker+は、校正済みグリッド上に波形を間隔の推定値とともに表示し、期外収縮の可能性がある拍動をマークします。
- うまく共有する。 波形全体を載せた詳しいPDFがあれば、あなたが見たものを医師も確認しやすくなります。

よくある質問
Apple Watchの心電図は正確ですか?
質のよい単一誘導の心電図を記録でき、Appleが示す制約の範囲内であれば、心房細動も良好な精度で分類します。ただし、多くの病気はほかの角度からしか見えないため、12誘導心電図の代わりにはなりません。
Apple Watchの心電図で心臓発作はわかりますか?
いいえ。Appleは、心電図アプリでは心臓発作を検知できないと説明しています。胸の痛み、圧迫感、締めつけられる感じがある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
医師はApple Watchの心電図を見てくれますか?
多くの医師は、とくに症状があるときに記録されたものであれば、役に立つ参考情報として目を通します。そのうえで、確かめたいことに応じて、12誘導心電図やより長時間のモニタリングを行うこともあります。
Apple Watchの心電図は、どの誘導にあたりますか?
左右の腕の間で見る第I誘導に似ています。
