心電図を開くと、波形はきれいなのに、QTcには値の代わりに横線が表示されている。何かが壊れたのかと思いたくなりますが、たいていはそうではありません。測定値が表示されるのは、その測定に必要な情報が記録に含まれている場合だけです。30秒間の単一誘導の記録では、必要な目印がいつもすべてそろうとは限りません。
まず、どの種類の「表示されない」なのかを見分ける
値が表示されない状態にはいくつかの種類があり、それぞれ次にとるべき対応が異なります。
| 表示の状態 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 記録そのものが見当たらない | 読み込まれていない | ヘルスケア、フィルタ、読み込み設定を確認する |
| 値がロックされている | 今のプランでは、その記録のフル解析がまだ行われていない | 今月3回まで使える無料の解析を1回使うか、Proを利用する |
| 解析がまだ続いている | 結果の準備ができていない | アプリを開いたまま、解析の完了を待つ |
| 値が利用できない | その記録では測定できない | 値をタップして理由を確認する |
| 値に「推定値」や「マニュアル」のラベルが付いている | ラベルと合わせて読む必要がある | 共有するときは数値とラベルをセットで伝える |
無料の解析かProを使うと、その記録から測定できる値のロックは解除されます。ただし、信号に含まれていない値を作り出すことはできません。
ほかの値は出ているのに、1つだけ表示されない理由
間隔はどれも、波形上の2つの目印の間で測定されます。目印の一方がはっきりしなければ、記録のほかの部分に問題がなくても、その間隔を信頼できる形で測定することはできません。
- 心拍数とR-R間隔には、R波の頂点(背の高い鋭い波)がはっきり見えることが必要です。最も安定して求められる値で、たいていは表示されます。
- QRS持続時間には、QRS波の始まりと終わりがはっきりしていることが必要です。
- PR間隔には、各QRS波の前にP波が見えることが必要です。P波が小さい、ノイズに埋もれている、あるいは心房細動のようにP波がない場合、PR間隔は測定できません。1
- QT間隔とQTcには、T波の終わりが必要です。T波の終わりはなだらかで位置を決めにくいことがあり、T波が平坦な場合や低い場合は特にそうです。判読の難しい波形では、専門家の間でもT波の終点について意見が分かれます。2
- HRVには、規則的な拍動の間隔がある程度続くことが必要です。期外収縮、拍動の抜け、ノイズがあるとその連続が途切れるため、期外収縮が多い記録ではHRVを求められないことがあります。3

値が表示されなくても、その波がないわけではない
QTが表示されないからといって、心臓にT波がないわけではありません。PRが表示されなくても、P波がなかったとは限らないのと同じです。この記録が、この角度から、この信号品質でとられた結果、その特徴が測定できるほどはっきり写らなかったということです。
Apple Watchが記録するのは単一の誘導で、医療機関でとる心電図の第I誘導に近いものです。第I誘導では小さく見える波も、ほかの誘導でははるかに大きく見えることがあります。Apple Watchの記録では測れない値を、医療機関の12誘導心電図なら測定できる理由のひとつがここにあります。4
記録し直すと改善する場合
理由がノイズや体の動きであれば、落ち着いた状態で記録し直すと改善することがよくあります。座って腕をテーブルの上に置き、Apple Watchを手首にぴったり装着して、30秒間じっとしていてください。詳しくはノイズの少ないApple Watchの心電図をとるためのガイドで紹介しています。
T波がとても平坦な場合など、理由が波形そのものにあるときは、記録し直しても同じ結果になるかもしれません。それもまた有用な情報なので、記録について医師に相談する機会があれば伝えるとよいでしょう。
いずれの場合も、前の記録は残しておいてください。新しい心電図は新たな30秒間の記録であり、前の記録を修正したものではありません。
トレンドでは表示されない値がどう扱われるか
たとえば、1週間に5件の心電図があり、QTの値があるのはそのうち3件だけだとします。この場合、トレンドはその週のQTとして3件分の値を集計します。残りの2件はQTのグラフに含まれないだけです。ゼロとして数えられることはないので、中央値が引き下げられることもありません。
そのため、グラフの点の数が記録の件数より少なくなることがあります。2つの期間を比べるときは、それぞれに実際にいくつの値が含まれているかを確認してください。グラフの点のもとになった記録を開く方法は、トレンドのガイドで紹介しています。
アプリが値を表示できるかどうかは、医療機関を受診する必要があるかどうかとは関係ありません。症状がある場合は、記録の内容にかかわらず、医師などの医療専門家に相談してください。
よくある質問
Apple Watchの心電図でQTcが表示されないのはなぜですか?
QTcを求めるには測定可能なQT間隔が必要で、QT間隔を測るにはT波の終わりがはっきりしている必要があります。T波が平坦な場合やノイズがある場合、リズムが不規則な場合は、30秒間の単一誘導の記録ではT波の終わりが不確かになり、測定できないことがあります。
リズムが心房細動のとき、PR間隔が表示されないのはなぜですか?
PR間隔は、P波の始まりからQRS波の始まりまでを測ったものです。心房細動でははっきりとしたP波が現れないため、測定するPR間隔そのものがありません。
記録のロックを解除すれば、表示されない測定値も見られますか?
無料の解析かProで記録のロックを解除すると、その記録から測定できる測定値がすべて表示されます。信号に必要な目印が写っていないために値が利用できない場合は、どの方法でもその値を得ることはできません。

