8月に、QTcが421 msと記載されたPDFを書き出したとします。10月、アップデートのあとで同じ心電図をアプリで開くと、414 msと表示されています。どちらの数値も、同じ30秒間の心臓の活動を表したものです。変わったのはソフトウェアによる記録の読み取り方で、心臓ではありません。
同じ心電図でも、ソフトウェアによって読み取り方が変わる理由
心電図の測定値の多くは、波が正確にどこで始まり、どこで終わるかによって決まります。心拍数のもとになるR波の頂点は鋭く、位置を特定しやすいものです。一方、QTを決めるT波の終わりはなだらかな傾斜になっていることが多く、終点をどこに置くかがわずかに違うだけで結果が変わります。1
これはソフトウェアに限らず、人が読む場合も同じです。経験を積んだ判読者が同じ波形を測っても、数ミリ秒の差が出ることがあります。アップデートでアプリがこうした目印を置く方法が改善されると、以前の記録の値の一部がわずかに変わります。
ヘルスケアの記録には手が加えられません
Apple Watchで記録した心電図はヘルスケアアプリに保存されており、ECG Tracker+はそれを読み取るだけです。アップデートによって、元の波形やAppleによる分類が書き換えられることはありません。2
値が変わっても、心臓に変化があったことを示すわけではないのはこのためです。変わった値は、過去にとった記録を別の方法で解析した結果です。同じ理由から、新しい数値が自動的に「正しい」値になるわけでもありません。新しい数値は、現在のバージョンの方法による結果です。
同じ条件どうしで比べる
以前の値と新しい値を比べる前に、公平な比較になっているかを確認しましょう。
- 同じ記録を比べる。 心電図の日付、時刻、記録時間が一致しているか照らし合わせます。
- 同じ測定値を比べる。 QTとQTcは別の値で、QTcは補正式によって変わります。
- 同じ計算式で比べる。 一方がBazett、もう一方がFridericiaを使っているというだけで、2つのQTcの値が異なることがあります。その差がどれほど大きくなりうるかは、QTcのガイドで紹介しています。
- 値の出どころをそろえる。 自動で計算された値か、手動で調整された値かを確認します。
- レポートの作成日を確認する。 書き出したPDFには、作成した時点の値が記載されています。作成日が記録日よりずっとあとの場合もあります。

バージョンと計算式を確認する場所
現在のアプリのバージョンとビルドは、「設定」>「ヘルプ&リーガル」>「このアプリについて」で確認できます。デフォルトのQTc計算式は、「設定」>「解析」>「デフォルトのQTc計算式」で確認できます。
現在のデフォルト設定を見ても、以前のレポートでどの計算式が使われたかがわかるとは限りません。そのレポートで、値の横に記載されている計算式を確認してください。以前の結果がどのバージョンで算出されたかわからない場合は、推測せずに「不明」として扱いましょう。
正確に比べるために、記録を残しておく
値の違いが気になる場合は、ヘルスケアにある元の心電図と以前のPDFを残しておいてください。記録を削除して読み込み直すと履歴がたどりにくくなるうえ、以前の解析結果が戻ることもありません。
サポートに問い合わせるときは、記録の日時、測定値の種類、以前の値と新しい値、計算式、わかっている範囲のバージョンを伝えてください。たとえば「8月12日10時14分の心電図です。8月のPDFではQTc 421 ms、現在のアプリでは414 msと表示されています。どちらもFridericiaです」のように書きます。3
サポートでは、ソフトウェアがその数値をどのように算出したかを説明できます。その値があなたにとって何を意味するかは、医師などの医療専門家が判断するものです。症状がある場合や、QTに影響する薬を服用している場合は特にそうです。
よくある質問
アップデート後にQTcが変わったのは、心臓が変化したからですか?
いいえ。アップデートによって、同じ記録が再解析されただけです。新しい値は以前の心電図を新たに読み取った結果であり、その後に心臓が変化したことを示すものではありません。
以前の値と新しい値、どちらを信頼すればよいですか?
どちらの値も、臨床で用いられる測定値ではありません。新しい値は、現在の方法による結果です。値が治療や診療に関わる場合は、医師が標準的な心電図でQTを測定できます。
以前の値を残しておくことはできますか?
はい。書き出したPDFには、書き出した時点の値が残ります。両方の値を残したい場合は、元の心電図と一緒にPDFを保管しておいてください。

